公益財団法人 日本医療機能評価機構 認定病院患者安全推進協議会

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活動成果

物的環境に関連する事例集

【掲載日】2022年10月25日(火)

事例番号 809

物的環境に関連する事例集

【発生場所】
病室
【関連したもの】
杖、ベッド
【精神・意識障害の有無】
【発生内容の分類】
転倒、転落
【主な原因】
D. スタッフによる物の不適切な使用・利用・選択・設置・確認不足によるリスク
発生内容

ベッドサイドにおいて患者私物の杖を置く場所が適切な配置でなかったために、看護師が倒れた杖を取りに行く際に患者から目を離し、患者が転倒した事象

詳細
腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術後の高齢女性患者。事案発生の2カ月前に大腿骨頚部骨折をきたし、人工骨頭置換術を施行していた。術後の発熱や併存疾患のためにADLおよび筋力が低下しており、リハビリ介入は行っていたが術後1週間経っても自立した歩行はできていなかった。眠前、看護師がトイレ誘導のために訪室し、ベッドに端座位となった患者の脇を支え離床しようとした際「杖が欲しい」と言われた。杖は術後まだ使用しておらずベッドサイドの床頭台に立てかけてあり、看護師がこれを取ろうとオーバーテーブルを移動した際に杖が床に倒れてしまった。これを拾うために端座位の患者から離れ10秒間程度背を向ける格好となった。その間にドンと音がして振り返ると、患者がベッドサイドの床に仰向けに倒れていた。
考えられる要因

杖を使用すると判断した際に杖が環境整備上、慣習的に患者から離れた位置に置かれていた。患者は4人床の右奥ベッドで、窓側に床頭台とオーバーテーブルがあり、右脚側の柵がない3点柵としていた。オーバーテーブルはベッドを跨がず柵のないベッドの足側に沿わせて配置されていた。身長151cmのためベッド高は最下限に下げてあった。端座位ならば足底は床につく状態であった。靴は容易に踵の入る本人私物であった。杖はリハビリでまだ使用開始していなかったため、手もとからは遠い床頭台の窓側タオル掛けに掛けてあった。食事は端座位でオーバーテーブルを使用していた。

対策

看護師の対応として、患者から目を離さない、手を触れておくことにより患者の転倒転落を予防することを挙げた。 また、看護師が患者を離床させる際の動線確保や空間確保を適切に行えていなかったことへの対策を下記の通り立案、実践を開始した。
患者は普段から、食事などの際に端座位でオーバーテーブルを使用する機会があった。そのためオーバーテーブルは足側でなくベッドの柵側に配置されていた。術後はリハビリで杖を使用しておらず、介助下での離床時にも杖歩行を実施していなかった。そのため転倒した際まで杖を使用する機会がなく、杖が床頭台のタオル掛けの窓側(患者からみて遠い側)に置かれていた。また空間確保のため椅子とオーバーテーブルを動かす際に杖が倒れてしまい、そのことが患者から目を離すことに繋がったと考えられる。対策として、離床介助の前に動線や空間を確保してから臨むよう指導・部署内共有を行うこととした。

資料

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