【掲載日】2007年02月25日(日)
患者安全推進ジャーナルNo.16を発行しました
【発行日】 | 2007年02月発行 |
【特集】 | 危険予知トレーニングⅡ |
No.16
本書は、患者安全推進協議会の定期刊行の患者安全推進ジャーナルとして刊行されているが、2005年の晩夏にジャーナル別冊として刊行された『危険予知トレーニングブック』の続編である。
前編ともいえるこの別冊の刊行前後あたりから全国の病院に、燎原を走る火のようにはやや言いすぎにしても、このKYTは予想を超える勢いで広まっていった。前編は増刷を経て約4000部が医療者の手に渡った。この数字はKYTが医療の現場にとって受け入れやすいものであることの証左であるとともに、現場の教育ニーズに内容が合致したことの反映でもあるのだろう。そして、この手法を支持してくれる多くの医療者がいることが確認できた。今回続編をお届けする運びとなったが、実は前編を集約していくプロセスでその必要性が確認されていた。
KYTの実用的な意味づけは本ページ以降の部分に記されているので、ここでは「安全文化の確立」という観点から再確認しておきたい。安全文化は決して静止している状態にはなく、むしろ改善の駆動力が常に存在する動的な状態にある、と言える。その駆動力となるものが、職員一人ひとりのリスクセンスである。だから、リスクセンスといわれる一種の能力の向上が一人ひとりに必須であると思われる。状況をみて、「何か変」、「ここがおかしい」、「こうしよう」という一連のリスク低減の活動のトリガーともいうべきセンスである。このセンスには個人差が明確に観察され、生得的な部分のあることも否定できないが、適切な訓練によって開発も大いにできるし、さらに深化もできる。KYTにはこのセンスを向上させる大きな力がある。
現場の職員の一人ひとりがこのセンスを磨き、病院組織がこれを生かす環境を精力的に整えることができ、この二つの要素がうまく動けば、病院に「安全文化が確立」している状態が現出する。
本書は前編と同様に、認定病院患者安全推進協議会のなかの教育プログラム部会のコアメンバーと事務局の労により出来上がった。感謝申し上げたい。同時に、本書が医療の安全を高めようと結集している協議会会員病院の共有の財産であることも再確認しておきたい。
認定病院患者安全推進協議会 教育プログラム部会
部会長 橋本廸生