【掲載日】2011年01月25日(火)
[別冊]病院内の自殺対策のすすめ方を発行しました
完売のため、販売は終了いたしました
【発行日】 | 2011年01月発行 |
[別冊]病院内の自殺対策のすすめ方
巻頭言
― 本プログラム企画の原点 ―
20年近く前のことです。病院評価の方法を勉強していた頃、何かの折に聖路加国際病院の元総婦長の内田卿子さんから、「院内で患者さんが自殺されたとき、縊首が多いのだけれど、若い看護婦は可哀想に思って一刻もはやくその紐を首からほどいてあげようとするのね。でもそれは駄目なのよ。結び目を外れた箇所をハサミで切ってあげるの」とのお話を聞きました。強く印象に残ることでした。なぜかハサミの刃先が紐と首の隙間をすべり入るイメージとそれを平然と遂行するプロフェショナルの凄さを、その頃は感じていました。
10年ほど前から医療安全の世界に入り、医療の様々な相を見て考えると、思いのほか「感情領域」に属することが多いことがわかりました。しかし、率直に表出してくることがあまりないようにも感じました。受け持ち患者が縊首の状態で発見されたとき動揺なく他の患者の看護ができるのだろうか、感情を押し殺したまま仕事をしているとしたら影響がどこかにでないのか、と心配になりました。同じ頃、「感情労働」というモノグラフや臨床倫理的な問題に直面した看護管理者の葛藤についての研究も目にしました。
これまで医療の現場で生起する「感情」の問題は、プロフェショナリズムという生硬な大義の前に、すくなくとも現場では、その組織的対処について取り上げられませんでした。すべて、「個人の問題」として分別処理されていたようです。組織対応をするスキルが未成熟だったことも大いに影響しています。
患者安全推進協議会の教育プログラム部会の活動方針のひとつとして「他では非着手であろう安全上の方法の開発」を意識しています。本プログラムは、医療安全に関わる「感情」の問題は他のどこも取り上げないとの考えで企画しました。同様な観点で、過去に取り上げ継続的に研修しているものに「医療コンフリクト・マネジメント」があります。本書は、その意味で第二弾です。
多くの専門家が議論を尽くして方法論を開発してくれました。感謝に堪えません。本書をもとに実際の研修を構成していくのですが、実践に則したものに改良するには、認定病院患者安全推進協議会のメンバーの協力が不可欠です。どうぞ、よろしくお願いします。
認定病院患者安全推進協議会 教育プログラム部会
部会長 橋本 迪生
※お断り 所属・肩書き等は発行当時のものです