公益財団法人 日本医療機能評価機構 認定病院患者安全推進協議会

ログイン
新規会員登録
お問い合わせ

活動成果

物的環境に関連する事例集

【掲載日】2017年08月25日(金)

事例番号 5

物的環境に関連する事例集

【発生場所】
病室
【関連したもの】
歩行器、段差
【精神・意識障害の有無】
【発生内容の分類】
転倒
【主な原因】
C. 不適切な環境設定・維持管理不足によるリスク
発生内容

病室改修後にできた入口段差部分の継ぎ目金具で歩行器使用患者が転倒。

詳細
患者の療養環境向上を目的に、病室改修工事を計画した際、ベッドからの転落事故重症事例発生防止対策で実施していた小児科で採用していた衝撃緩衝床材の効果に一定の効果があるという評価があったため、改修工事を機に成人病室でも衝撃緩衝床材の導入を看護部と提案した。衝撃が現状の7割程度に低減できる床材が採用され、改修工事が実施された。施工業者は過去の小児科を行ったところとは違った。廊下は対象外だったので、段差が生じることは予め打合せの過程で業者から病院側にも報告がされていた。しかし、双方のリスクイメージの共有には至らなかった。入口の段差部分に金具を使用して、通常の施工常識の範囲の施工方法で実施した。当初、幅2㎝弱程度の金具で施工したところ、段差に歩行器が引っ掛かり、転倒事故が発生した。施工業者に報告し、継ぎ目の金具をスロープ状のものへと付け替え工事を施工した。しかし、その後も複数回、継ぎ目に歩行器が引っ掛かったことが原因の転倒事故が発生した。
当初、患者への歩行器等の適正使用の教育強化と院内危険個所の注意喚起、患者リスクアセスメントの精度向上への取り組みを行ったが、患者が理解していても、ふと気を抜いた時に発生しているという状況が明らかになり、根本的な物理的構造対策を行わなければ、再発防止は難しい、と判断した。
業者へも事故発生の事実を報告し、担当者と協議を重ね、現場が必要としている安全な継ぎ目の形状と、業者が対応可能な方法の協議を重ね、一定の結論が出たところで、念のため、実物大の模型を作製して貰った。実際に模型の上で歩行器や点滴スタンドを動かしてある程度の評価を行い、更に実際の病室を試験的に一部屋を空けて工事を行い、医療者立会いの下、患者さんのご協力を頂いて歩行器で動いてみて頂いた。患者さんから、歩行が安全にしやすくなったとの評価を頂いたため、順次改修工事を実施し、全室終了している。
考えられる要因

病院施設改修計画をする際、業種違いにより患者リスク認識の違いから、適切なリスクの共有・評価が出来なかった。また、二度目の改修工事を行った際にも、「工事手法の常識」から継ぎ目の金具を使用する方法が第一選択として業者から提案され、金具の形状の変更が実施されたが、「金具」自体が段差リスクとなり、再度の歩行器使用患者の転倒事故が発生した。

対策

複数患者の転倒事故が発生を受けて、医療安全推進室が院内の調整を行い、病棟看護師・理学療法士・施設課職員・施工業者・医療安全推進室員で検討会を持った。現場検証から始まり、同意を得られた患者から施工業者が直接話を聞ける機会も設けた。改善策は施工工事の常識ではなく、患者の特性・歩行補助具・希望される形状を伝え、施工業者がそれに実際に対応できる施工方法を様々な資材業者に相談して、入口床模型を作製、検証した。金具を使用することで物理的な段差が生じること自体が障害となるため、一般的な継ぎ目を金具でつなぐ施工法ではなく、中の緩衝材から継ぎ目部分までを20㎝ほど傾斜をつけて段差を解消し、上の床材を接着剤で貼りつけ、目地を埋めて金具を使用しない方法を採用した。
結果、殆ど傾斜の感じられない緩傾斜のついた病室入口への改修工事が可能となった。まずは試行的に数室を工事し、患者さんのご意見を頂き、安全を確認できたところで順次改修工事を行った。工事完了後、病室入口での転倒事故は発生していない。

資料

PDFダウンロード

※掲載している事例データ全ての2次利用ならびに引用・転載を禁止します。

協議会案内
セミナー
動画
ジャーナル
活動成果
事務手続き