公益財団法人 日本医療機能評価機構 認定病院患者安全推進協議会

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【掲載日】2007年04月17日(火)

病院内における自殺予防

【発信日】 2007年04月17日(火)
【部会名】 精神科領域における医療安全管理検討会

提言

この提言の改訂版を発信しています。
院内自殺の予防と事後対応(2017年08月28日(月))

 

 我が国の自殺者数は、8年連続で年間3万人1),2)を超える状況が続いており、その予防対策が急務となっていることは周知の通りである。米国の医療施設評価認証機構、Joint Commission for Accreditation of Healthcare Organizations (JCAHO)の医療事故報告制度の中で、最も多い重大事故は自殺となっている(2006年)3)。一方わが国においては、入院中の自殺に関してその実態について十分な把握がなされておらず、自殺の予防、事故後の対応などについての指針も確立されていなかった。  

 これらのことから、(財)日本医療機能評価機構 認定病院患者安全推進協議会(以下、協議会)に設置した「精神科領域における医療安全管理検討会」は、病院内における自殺事故に関する実態を把握する目的で、2005年9月に会員病院に対して質問紙を用いた調査を行った(以下、アンケート調査)。その結果、一般病院:575(回収率:63.7%)、精神科病院及び精神科病床を有する病院:106(回収率:64.2%)から回答を得た。

 同アンケート調査結果の概要については、既に「患者安全推進ジャーナル(13号,64-69,2006)」4)において報告した。この度上記調査結果に加え、自殺に関する先行研究や我が国の実態等も踏まえて、協議会 精神科領域における医療安全管理検討会では、ここに「病院内における自殺予防、提言」として以下11項目の提言を行う。さらに、日常臨床場面において自殺予防に資するべく、「自殺のリスク・アセスメントのためのチェック・リスト」を提示する。

 なお、この提言は、ベストプラクティスを目指したものであり、現在の医療水準を担保したものではない。

 

 

1.自殺が主要な医療事故であることを知る

 協議会・会員病院に対して実施された調査(2005年)によれば、回答の得られた病院の29%に、過去3年以内に入院患者の自殺が認められている。自殺が相当数生じていることを銘記する必要がある。

 

2.疾病罹患ないしは健康問題は、自殺の主要動機であることを知る

 健康問題は、自殺の主要動機のひとつである。身体疾患と自殺の間には密接な関係があることが知られており、悪性新生物をはじめとしてさまざまな身体疾患において自殺の危険度が高いことも知られている。

 

3.ほとんどの自殺者は、その行為の時点で精神疾患に罹患していることを知る

 自殺に至った事情や経過は人それぞれであるが、自殺者の80%以上が、精神疾患に罹患した状態で自殺を企図していたことが明らかにされている。ただし多くの自殺者に自身が精神疾患に罹患しているという自覚はなく、精神科も受療していない。

 

4.身体疾患・精神疾患の罹患以外の危険因子を知る

 精神疾患の罹患や既往以外に、過去の自傷や自殺企図歴、喪失体験や社会的・心理的孤立、自殺の家族歴は自殺の危険因子であり、これらが認められる患者については、精神状態の評価を導入し、十分な関わりと観察を行うことが望まれる。

 

5.自殺の予兆に注意をはらう

 多くの自殺者は、自殺の直前に周囲に自殺の意思表示やサインを表す。自殺への願望や生に対する諦め、絶望感を口にする患者、行動に変化や異常が見られる患者には特に注意が必要である。

 

6.患者の立場になってこころのケアに配慮する

 疾病の治療過程や、病状説明・告知の直後に自殺が生じることがある。診療科によらず、医療者は、受け持ちの患者の病者としての苦悩を理解し、こころのケアに常に配慮することが求められる。

 

7.精神・心身医療専門家への相談を行う

 患者に、精神症状や行動上の変化・異常、自殺の予兆と思われる言動、明らかな危険因子など認められる場合には、受け持ちのスタッフは専門科へのコンサルテーションを検討すべきである。

 

8.自殺を未然に防ぐための環境整備を行う

 自殺の手段では、“縊首”、“高所からの飛び降り”の両者が大半を占める。それらによる自殺事故を防止するために、病院の設備、備品等に関する環境整備が重要であり、特に危険度が高いと思われる患者においては、その所持品等にも注意を向ける必要がある。

 

9.自殺の続発に注意を払う

 一人の自殺の影響で、別の自殺が続発・群発することがあるので注意を要する。自殺者に近しいもの、類似の境遇にあるもので自殺の危険因子を有するものには特に注意を払わなければならない。

 

10.関係者のこころのケアを実施する

 現在、一般病院、精神科病院、精神科病床を有する病院のいずれにおいても、自殺者に直接関わったり現場に遭遇した医療スタッフに対するメンタル・ケアは質量ともに不充分であり、一貫したケアの体制が確立されることが望ましい。

 

11.自殺予防についての学習機会を設ける

 自殺を予防するためには、そもそも自殺企図者の特性や自殺行動への理解が不可欠であり、そのための学習機会が必要である。学習は、病棟スタッフ間の話し合いから安全管理委員会のレベルにいたるまで、さまざまなレベルで行われる必要がある。事例検討等も有用である。

 

 


 

1)厚生労働省:平成17年人口動態統計(確定)の概況:死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率,http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei05/hyo7.html,2007
2)警察庁生活安全局地域課:平成17年中における自殺の概要資,http://www.npa.go.jp/toukei/chiiki6/20060605.pdf,2007
3)Joint Commission on Accreditation of Healthcare Organizations: Sentinal event, http://www.jointcommission.org/SentinelEvents/, 2007

資料

・病院内における自殺予防

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