公益財団法人 日本医療機能評価機構 認定病院患者安全推進協議会

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活動成果

【掲載日】2006年03月31日(金)

経鼻栄養チューブ挿入の安全確保

提言

 認定病院患者安全推進協議会(以下、協議会)において、気管に迷入した経鼻栄養チューブに栄養剤を注入したために重篤な呼吸状態に陥った事例が複数報告された。そして、協議会会員病院1060 病院(平成17 年11 月)にアンケート調査を行ったところ、回答512病院中、197 病院(38.5%)で胃管の気管あるいは気管支への迷入を経験したと答え、さらにその内の50 病院は栄養剤を注入した後のチアノーゼあるいは低酸素症で迷入に気づいたとしている1)。またイギリスのNational Patient Safety Agency においても2003 年から2004 年の2年間に11 例の死亡例が報告され、「患者の安全性に関する警告(patient safetyalert)」が配信されている2)。こうしたことから、協議会処置・チューブトラブル部会では、経鼻栄養チューブを安全に挿入するために以下の提言を行う。

 

 

1.確認法として胃内容物の吸引を優先

 協議会が行ったアンケート調査によると、経鼻栄養チューブが胃内にあることを確認する方法として、①胃泡音を確認する、②胃内容物を吸引する、③X 線で確認する、以上3つの方法が広く実施されていることが確認された。しかしながら、胃泡音の確認は誤認が多いために信頼できる方法とは言えない。また、最も確実な方法はX線で確認することであるが、被曝量や費用の問題がある。そのため、当部会では胃内容物を確認することを第1に推奨する。胃内容物を確認できたら栄養剤を注入する。

 

2.栄養剤注入前後の観察

 栄養剤を注入する前には、①口腔内の確認(経鼻栄養チューブが蛇行していないかを視認)、②胃内容物の吸引、③経鼻栄養チューブのマーキング位置の確認、以上3点が確認できれば注入を開始する。胃泡音の確認は必須ではない。

 注入後は、異常早期発見に努めた観察を行う。

 

3.経鼻栄養チューブ挿入前のリスク評価とインフォームド・コンセント

 経鼻栄養チューブを挿入して経管栄養を行う前には、患者評価を行い、経管栄養の意義、経鼻栄養チューブの気管への迷入や誤嚥などのリスク、そしてその対処法などを患者・家族へ説明し、同意を得る必要がある。

 

4.経鼻栄養チューブ挿入に関する環境整備と教育

 経鼻栄養チューブは、材質や形状などに十分配慮して採用する必要がある。またスタイレット付き経鼻栄養チューブ挿入により、気管への迷入に加えて、肺損傷や食道損傷などが報告されている。スタイレット付き経鼻栄養チューブは適切な管理下で使用されることが望ましい。経鼻栄養チューブ管理に関わるスタッフは、挿入法や各種確認方法、そしてリスク評価の実施に習熟する必要がある。またX線で経鼻栄養チューブの留置状況を確認するためには、適切な訓練を受けた臨床スタッフが行う必要がある。

 


1) 認定病院患者安全推進協議会(2006)「経管栄養に関するアンケート調査」『患者安全推進ジャーナル』No.12、P83-89
2) National patient safety agency.(2005) “Reducing the harm caused by misplaced nasogastric feeding tubes, ” Patient safety alert 05 ( http://www.npsa.nhs.uk)

資料

・経鼻栄養チューブ挿入の安全確保

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