【掲載日】2022年02月25日(金)
[開催報告]2021年度 第2回 薬剤安全セミナー(1/29)を開催しました
【開催日】 | 2022年01月29日(土) |
【部会名】 | 薬剤安全部会 |
活動成果
常備薬の適切な管理
~抗がん剤~
2022年1月29日、「2021年度第2回薬剤安全セミナー」を開催いたしました。COVID-19への対応として、前年度からオンライン方式で行っていますが、今回も全国各地より277名の方々にご参加いただきました。遠方の施設からも多数のご参加をいただき、オンライン方式がむしろ功を奏した形となりました。また、参加者の職種も薬剤師に限らず、看護師、医師、診療放射線技師、臨床検査技師、事務職と多職種から構成されていました。
薬剤安全部会では、昨年度から「常備薬の適切な管理」をテーマに掲げ、薬剤部以外の部署における常備薬の適切な管理の推進のための活動を行ってきました。今回は抗がん剤を取り上げ、教育講演および2021年8~10月に実施した「抗がん剤の管理状況に関するアンケート」の集計結果報告、そして会員病院の取り組み事例発表が行われました。
セミナーでは、まず「常備薬の適切な管理に関する最近の話題」というテーマで、一般社団法人 医薬品安全使用調査研究機構 設立準備室 室長 土屋文人先生に教育講演をお願いしました。講演では今般、医療事故調査・支援センターにより発行された「医療事故の再発防止に向けた提言 第15号 ~薬剤の誤投与に係る死亡事例の分析~」から、9つの提言が紹介されました。抗がん剤による死亡事故も分析対象に含まれており、まさに今回の教育講演として相応しく、タイムリーな内容であったと思います。そして、聴講者に向けて「まず、自施設でこれらの提言が実践されているかをチェックしてほしい」とのご指導をいただきました。
続いて部会員より抗がん剤の管理状況に関するアンケートの結果をお示ししました。アンケートは52の質問から構成され、回答はかなりの労力を要するものでしたが、253もの会員施設からご回答いただくことができました。薬剤の採用からレジメン審査、保管・管理、取り扱い資格、オーダリング、監査など、多岐にわたって集計しその結果をお示ししました。また、34施設(14%)では今回のテーマである常備配置が行われていましたが、当該施設での詳細な管理状況も確認することができました。
後半は、アンケートにお答えいただいた会員施設の中から薬剤安全部会が依頼した3施設により、最新の取り組みをご発表いただきました。旭川赤十字病院 薬剤部 近藤智幸先生から「抗がん剤の適切な管理(準備から投与まで)について」、東京慈恵会医科大学附属病院 医療安全推進部 廣瀬俊昭先生から「抗がん剤の混合調製における取組と課題」、脳神経センター大田記念病院 診療技術部 薬剤課 金尾 淳子先生からは「がん化学療法に対する当院薬剤師の取り組み」というタイトルでご発表いただきました。それぞれの発表では、レジメン審査から患者さんへの投与に至るまでの流れと取り組み、インシデント事例や抗がん剤調製支援システムを用いた調製業務、リスク回避のための薬剤師の取り組みが紹介されました。また、質疑応答の時間では多くの質問が参加者より寄せられ、各演者とディスカッションが活発に行われました。
今回のセミナーを通じ、抗がん剤はレジメン審査から患者さんへの投与に至るまでに数多くの過程が存在し、多職種かつ多人数のかかわりが必要になることをあらためて理解することができました。そして、一つにでも瑕疵があると重大なインシデントにつながる可能性があり、より安全に留意して取り扱う必要がある薬剤であることが分かりました。また、抗がん剤を「配置薬」とすることはリスクを加えることであるため、より慎重になるべきであり、実行にあたっては確実なシステムを構築しておく必要があると考えさせられました。
本セミナーでお示しした情報が、ご参加いただいた施設において少しでもお役立ていただくことができれば幸いと思います。薬剤安全部会では今後も会員の皆様に有意義なセミナーや情報提供を企画してまいりますので、引き続き皆様の積極的なご参加をお願い申し上げます。
薬剤安全部会 部会長 川井 信孝
(埼玉医科大学国際医療センター 医療安全対策室 室長)
プログラム(敬称略)
■開会挨拶
川井 信孝(部会長/埼玉医科大学国際医療センター 医療安全対策室 室長)
■教育講演
座長:米倉 一郎(部会員/独立行政法人 地域医療機能推進機構
東京新宿メディカルセンター ICU科 院長補佐)
「常備薬の適切な管理に関する最近の話題」
土屋 文人(一般社団法人 医薬品安全使用調査研究機構 設立準備室 室長)
■解説
座長:米倉 一郎
「抗がん剤の管理状況に関するアンケート」集計結果
赤木 晋介(副部会長/公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
薬剤部 病棟薬剤部長 HQM推進センター 患者安全リスク対策グループ
主任室員)
■会員病院の取り組み事例発表
座長:米倉 一郎
「抗がん剤の適切な管理(準備から投与まで)について」
旭川赤十字病院 薬剤部副部長 近藤 智幸
「抗がん剤の混合調製における取り組みと課題」
東京慈恵会医科大学附属病院 医療安全推進部 医薬品安全管理責任者 廣瀬 俊昭
「がん化学療法に対する当院薬剤師の取り組み」
社会医療法人 祥和会 脳神経センター大田記念病院 診療技術部 薬剤課 課長補佐
金尾 淳子
■質疑応答
座長:米倉 一郎
菅野 浩(部会員/済生会横浜市東部病院 薬剤部 部長)
■総括・閉会挨拶
川井 信孝
見逃し配信
2月25日(金)~8月31日(水)まで、会員病院限定で見逃し配信をしています。